quinta-feira, 5 de novembro de 2009

1.源泉の涵養

 いま日本は精神的に物質的にまことに乏しいです。
 この日本を最も豊かにするものは、人間の持つ知能であり、一人の知恵は世界一の日本にするかも知れませんし、決して奇蹟でも僥倖でもありません。その知恵は何処にあるのか、何処かにあっても引き出すことが出来ずじまいになるかもしれません。
 それを見出し伸ばすものは、政治力・経済力に負う所が頗る多いのです。
 しかもその何れもが乏しく、政治の貧困は格別です。
 成程戦時・戦後の国内外の事情は総てが不如意で、それ等が因となり果となり相関連し、錯綜し、且つ世界経済・政策・思想等の強圧に棹さす政治の困難さは、容易ならざるものがあり、一入苦艱を免れないものと雖も、多事多難であるからとて、失政も止むなしとせず、冷静緻密な判断による計画と、正確強力なる積極的実践力を有する、真の民衆政治に傾倒しなければなりませんし、国政担当者が、自己のみの主張を強行したり、自己の役務を履き違え、政権争奪や、名声や、汚財の獲得に狂奔する等は以ての外で、そんな野望が毛頭でもあれば、不適格者として葬らねばなりません。而して外国次第の手無し政治は止めて、自らなる内よりの力を発揚して、自主、自力政治に転換し、先ず自国を完成して、世界に和する基幹構想を確立することです。
 その構想計画のうちには、重要にして一日たりとも怱せに成し得ないもののみではあるが、私は国民全般の福利を普遍的に増進する、今日の重要施策と同時に、今一つ、今直ちに着手しなければならぬ、基本的重大方策があることを強調し度いのです。
 今日の問題に忙殺されている中にも、明日の破綻を防ぎ、光彩輝く将来を画策・施工して置く事で、今日は苦しく共、むしろそれに総てを賭ける方が、賢明だと信じています。私は、今日はどうにか生きて働けてさえあれば辛抱し、今日に於て明日のために勉学し、十年後のために果樹の種を下して肥培し、百年千年後のために植樹を行ない、道路・水路の整備を強行し、明日・次代の児孫の豊かさを念うものです。
 自己の延長である愛児に、楽園を贈ることは、間違いのない真理であり、自分に尽す結果になり、今日自己一代の栄華や、自己の子孫のみの為に囲いの中に営み貯える、何時侵され崩れるか図られぬ不安全さを思えば、ひとと共に力を合わせて行ない、皆血の繋がる人間同族の児孫の幸福のために、致す事が真実です。私はこの真理を確信しますが故に、同じ考え方の人々と共に、明日の楽しみに生きて居るつもりですが、中にはその方面の事は、奇篤な奉仕者のものずき位に思って、自分のみを願い、他に迷惑・妨害になる行為を平然として続けている人が、確かにあります。併し私達の社会には、犠牲も奉仕も一切ありませんから、残念乍ら、私はそれ等の人のための奉仕者には、成ろうとしても成り終ることは不可能でしょう。
 私は明日の計画のうちの、主要項目の一つとして、一番先に挙げ度いものは、そして一番効果的で、この乏しい日本を豊かにするものは、知恵の鉱脈を探り当て、それを開発することだと思います。
 幸福条件を解明し、それを探求して突き止める適任者を見出し、その人の活動を阻害する凡ての条件を排除し、又保護して、経済的に、精神的に援助・協力する・頭脳チャンピオンに期待する方法を、絶対的に強化したいと思います。
 現在でもこの点について、それぞれ制度を設け、実施されてはおりますが、微温にして徹底を欠き、充分なる機能が現れて居ないようです。
 真の学者や、思索家・研究家はそうした専攻的方面には、最も優れた素質を保有していても、頭脳と時間を一方へ集注し、それに偏すれば偏する程、偏するが故にも、その多くの人は、経済的や、肉体的健康等の生活能力が低下し、時間的にも、研究資料の蒐集にも不如意となり、環境条件に制約を受けて、自由に思いのままの追及に支障を生じ、その優秀な能力を発揮し得ず、減殺され、埋もれ、中絶の止むなきに至る事屡々です。
 こうした逸材の大業を保護育成し、活発積極化する施策は、根を培い肥し、やがて枝葉を繁茂し、良果を稔らす、根本的な問題で、不具・疾病・療養・養老・貧困等の枝葉の厚生福祉施設と、教育にも万全を期すると共に、根源の涵養策を強行すべきことだと思います。
 乏しい日本を豊かに幸福にするには、その条件である心理的なものと、それから物質その物の豊満によって、解決出来ることは再度云っています。そしてその解決の基本的解明に当る心理学者や、物理学者等が、生活や、設備や、資料に捉われないで、健康で専念して、究明に没頭出来るよう、学者(学者とは限らないが)の優先待遇計画の画期的強化に、協力致し度いと思うものです。

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