quinta-feira, 5 de novembro de 2009

5.私は秘密を堅持している

 私は今迄に私の社会構想や農法等について、一端に触れるのみで、具体的なものは殆ど発表して居りません。
 ヤマギシズム社会にある根源的要素の一つを、最も性格に決定的に打ち出す、頗る簡単な、数語で説明出来る言葉があります。
 この言葉で総てを誰でもが判定することが出来るのですが、私はそれを絶対に口外しません。いずれは云いますが、今それを洩らすと、ある国々が思い違いをして非常なショックを受け、多分敲いて来るでしょうから、私の身が危険になります。元より生命は一度はなくなる事はよく知って居りますから、その方は大した事とは思いませんが、目に見えない、いのちが失くなると、書き続けることさえ出来なくなり、理想社会が遅れるでしょうから発表しないのです。
 そこでその字は出さずに、その字句と同じ意味のことをここでも書いて居りますし、各種の公開の席でも発表して居りまして、現に実践に移しつつあることで、別に危険でもなく、誰に迷惑を与えるものでもなく、内容は至って穏健なもので、必ずこの社会が全世界に実現することは、自然の理法であり、最終のものであり、この社会になる迄は紛争は、絶えないでしょう。
 その字句さえ出せば平易に判り、こんな廻りくどい文章は相当削除されるのですが、迂遠な方法を採らなければならないのは、誤解しそうな国の人々には字句そのものが余りにも鋭く、激しい感じを与えますから、当分云わない迄で、云っても云わなく共事実は、ぐんぐん進行さしていますから、お互い痛い目をせず、混乱なしに、血を見ないで、幸福社会を実現さすために、ある段階迄は絶対に云わない事にしています。
 これが私の一つの秘密で、云わない方が理想社会が遅れないで、確実に実現するからです。これ程親しい仲でなぜ云わないかと怒る人もありますが、その理をよく解って下さいね。
 次の秘密は大したものでなく、私の農法で、例えば馬鈴薯や、キャベツ作りの一技術ですが、農業は匿すことは出来難いもので、公開の圃場で、何時、何をしているか、どんなに出来たか、一目で判り、隣地の農家は、不思議な出来映えを見て話しかけますが、何故か掴もうとしませんし、私も親切の押し売りをしない方で、本当に欲しく、本気でやり度い人ならば、どうしてでも探りもしようし、尋ねもする筈で、こちらが不親切なのではなく、先方に欲がなく、自身に親切が足りないから、私をして云わさないだけの事です。
 しかもこちらから押しかけて勧めると、よく失敗するもので、自分の不熱心さで失敗した場合、その不足の矢は必ずと云ってよい程、こちらへ向けて来るのが、今の社会に住む人間の通有性で、軽率な人には失敗の惧れがあるこの馬鈴薯栽培は、云わない方が双方のためでもあり、この栽培法が一般化しても、人類幸福には大した効用もありませんから、今の処強いて云わないのです。
 私の稲作法は、僅か5年足らずの新参百姓の、薄い頭で試みた、原理的技術であって、実験年数浅く、何処ででも、誰にでも、どんな年でも、必ず何石穫ると云い切ることの出来ない、いわば決定版でない故に、他の人、他の地方、或る場合により、失敗されては相済まぬし、その責任もよう取りませんから、他の稲作の神様連程厚カ間敷く押し出さない迄です。養鶏が一応見通しがつけば、近く発表するつもりで、これも日本はおろか米作地一体に拡がる自身はあります。
 大根栽培は私の生命線で、これさえ放さなかったら、私は一生食い逸れないと思って、温めて出さないです。
 人は私のような人間にでも、用のある間は寄って来て、使用しようとしますし、それぞれ自分のために、大いに使ったらよいものを、(私も使用され度いが)一寸手に余り、うまく使いこなせる人が少なく、役に立たぬとなると、鼻でもかんで捨てられることを自覚(不徳故に)していますし、私自身が、誰にも恩返しをしたことがありませんし、しようとも思いませんし、又出来ませんし、恩を売っても居ませんから、捨てられ、踏み躪られて成仏?するのが私の当然な運命で、人は大体そうしたものと決めて出発していますから、何と罵られよう共、ニコリッとしていられるのです。
 私に感謝だの恩返しだの、私のためにお助けする等云われると、片腹痛いです。生かして置いた方がお役に立つなら、飼って置くなさいよです。
 一人になって大根でも作って、書き続けるうちにさらばが出来たら元々です。
 この会も、私一人の会でもなく、私に名を成さすための会でもなく、目的は他にあり、私のためになら何もされない方が賢明で、自分の抱かれる理想社会を、自分及び自らの子孫を含めた皆の人の幸福を目指して、その実現のために、相共に協力されるのなれば歓迎するのです。大いに提携したいのです。
 この大根作りも、自分一人で儲けたい人が知ったなれば、日本中の市場を皆大根に埋めて、売れぬ大根の運賃で悶死し、皆が知ったら大根攻めに会いますし、それから、日本人から大根は切り離すことの出来ない程の必需品でも、大根のみでは胸が空いて水膨れになり、大根腹では余り幸福にもなれそうでありませんし、米や卵の代用にもなりかねますから、程ほどにして置きましょう。

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